簀を編む人 - 小畑文子さん (その1)
和紙を透かすと現われる美しい簀(す)の目。
それは、ひとつとして同じものがありません。
用途に合わせた籤(ひご)、網目となる糸、
そしてその編み具合によって生まれる、
美しい簀の模様も和紙の魅力のひとつ。

しかし、簀はその美しさのためだけでなく、
激しい動きを伴う作業に耐えうる強さ、しなやかさ、
そして簀を入れる桁(けた)との相性など、
高い性能も求められる和紙用具でもあります。

使い手のため、そして求める和紙の種類など
様々な要素を加味し、ひとつの簀をつくる。
それは、仕事への愛情はもちろん、的確であること、
そしてなにより根気が必要な仕事でした。

人を訪ねて 2007年霜月 小春日和
和紙に欠かせない道具の一つ、簀編みの仕事をされている
小畑文子さんを訪ね、鳥取県鹿野町の温泉街から程近い
小畑工務店の事務所の2階を訪れました。
全国的に簀を編む職人をはじめ、和紙づくりに欠かせない
道具をつくる職人は減少傾向にあり、
この鳥取県内でも小畑さんが唯一の簀編みの職人です。
穏やかな小春日和。
工房の入り口である事務所の玄関に穏やかな笑顔の
小畑文子さんがそこにいました。
受け継がれる道具
早速案内された文子さんの工房には、80年以上使い込まれた編み機を中心に、
極めて細くすごかれた真竹の籤の束がその傍らに置いてあります。

編み機にかかった、糸巻き用の鉛の錘(おもり)や糸巻き機も文子さんのお父さんが遺した
思い入れの深い小畑家独自の用具です。
とにかく、この工房にあるほとんどが小畑家でつくられたもの。
簀に使う糸の長さを計る独自のスケールも、
一見するとただの木の板に釘が打ってあるだけですが、世界にひとつだけの大切な道具なのです。


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by ak-shio | 2007-12-28 10:50 | いろは人訪記