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鳥取の家具を訪ねて ~美の人脈

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鳥取の家具、と聞いてイメージが沸いてこない。
でも、上のランプスタンドはどこかで見たことあるよ、という方もあるのではないでしょうか。


少し時代を遡れば、小津安二郎監督の映画作品。
「私は小道具や意匠にうるさいといわれる。」と監督自らおっしゃるように、カメラの目はごまかせないと、作風とシーンにマッチした小道具が選ばれていました。

また最近では、NHK朝の連続ドラマ小説『ちりとてちん』。
渡瀬恒彦さんが演じるお師匠さんの部屋にそっと置かれていたんです。


古来式の燭台をヒントした電気スタンドを考案したのは、吉田璋也さん(1898~1972)。
彼は製図を基に小谷さんには台座、寅尾さんには笠の部分と、二人の職人に依頼し、このスタンドを作りました。昭和7年のことです。

それから約80年建った現在でも、鳥取で電気スタンドをつくっている工房、鳥取民芸木工の福田さんという方がいます。鳥取のたくみ工藝店と東京・西銀座のたくみで取り扱いをしているので、気になる方は是非お近くのたくみへお問合せ下さい。


とはいっても、昔から電気スタンドだけを作っていたわけではないんですよ。
じつは、鳥取の家具はテーブル、椅子、キャビネット、箪笥などがあります。
民芸家具、というと古民家においてあるような古めかしい家具を想像してしまいますが、
鳥取民芸家具といった場合、少し事情が違います。

鳥取の家具を訪ねて ~美の人脈_f0157387_11142940.jpg鳥取の家具を訪ねて ~美の人脈_f0157387_11151385.jpg
旧吉田医院にて

吉田璋也さんがもっとも大切にしていた蔵書のひとつに、昭和4年にアメリカで発行された『パインファニチャー』という一冊があります。
18世紀ごろの米国東部ニューイングランド地方の家具、特にシェーカー家具の写真を多く掲載している本で、後半にはイラストつきで寸法まで詳細に示された本でした。

シェーカー家具というのは決して華美な家具ではありません。
むしろ簡素であり、使い手が造ったかのような、普遍的な美しさをもった、そんなところが今でも人気の理由でしょうか。

このパインファニチャーを基礎とし、洋風化した日本人のライフスタイルにあうよう調和する家具を造ろうという試みが鳥取で始まったのが、昭和の初期のことでした。


鳥取の家具を訪ねて ~美の人脈_f0157387_17105535.jpgこうした家具たちに強い影響を受けながら、鳥取でひとつの美意識が育っていったのです。

璋也さんが好きだった「木瓜(もっこう)面」または「隅入り角」という四角の四隅を外から内に折りいれたデザインがあります。(鳥取たくみ割烹店看板)


これは、鳥取民芸家具の特徴であり、今でも看板やパンフレットなどにもその形を取り入れたものを多く見つけることができます。清潔を保つために塗られた拭き漆は、木目を活かしたあめ色です。この色のファンも多いのではないでしょうか?



樗谿神社の参道沿いに建つ『やまびこ館』での特別展示『美の人脈~文化をつなぐ人々』は今月24日までです。
鳥取の民芸家具の始まりを知る資料のほか、当時交わされた書簡や、ににぐりネクタイなども展示されています。


是非、足を運んでみてください。
参道の紅葉も今が見ごろです。

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大因州のウェブサイト http://www.daiinshu.co.jp

by ak-shio | 2008-11-08 15:40 | 因州箋だより

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